昔から先端恐怖症である。原因はわからない。たぶん生まれつきだろう。
先端恐怖症というのは、針とか鉛筆とかはさみとかなんか尖った物を見ると恐怖を感じる恐怖症の一種。
恐怖症と言っても僕の場合は尖ったものを見ると強烈なめまいがするとか動悸がするとかではないので、非常に軽度なものだ。日常生活にほぼ支障はない。

僕の状態としては、尖ったものを見ると「ウッ、なんか目に入りそうで嫌だ」という気持ちが湧いてきて目を背けたり、顔をしかめたり、場合によっては「防御姿勢」を取ってしまうみたいな感じ。防御姿勢というのは、目の周辺を手で抑えたり覆ったりというポーズで、不思議とこの姿勢を取っていると多少恐怖感が和らぐ。

「尖った物」という判定も割と主観的であいまいな感覚で、それまで全く気になっていなかったのに「あれ、この物体尖ってね?」と思った瞬間に急に気になりだして、目を閉じたくなるような嫌な感じがしたりすることもある。食事中に急にスプーンの持ち手側が目の方向に向いているのが気持ち悪くなってきたりだとか。
これ全然先端じゃないやんけと自分でも思うものが怖くなってくることもある。今こうして文字を打っている瞬間も「なんか文字って目に入りそうで嫌だなあ……」という気持ちが湧いてきている。ウウッ。

他人が目に尖ったものを近づけているのを見るのも非常に不快だ。昔、友達に先端恐怖症なんだよねという話をしたら、彼は「俺全然平気だよ」と言って持っていたペンを自分の目に近づけて「ホラ」とか言ってきたが、未だにちょこちょこ思い出す恐怖体験だった。あいつ許さんぞ。今も顔をレーズンみたいにしわしわにしかめながらこの話を書いている。

日常生活に支障がないと言ったが、一度だけ行っていた作業を中断せざるを得ない事態になったことがある。中学生の頃の技術の授業中、木製の棚かなにかを作っていたが、その時まで全く気になっていなかったのに急に机の上に散らばる無数のネジやら釘やらボルトやらの金属部品が目に飛び込んでくるような気がして作業できなくなってしまった。その時は授業が終わるまでひたすら貝みたいになって防御姿勢を取っていた。

あと思い出すのは、昔ディズニーランドにあったキャプテンEOというアトラクション。キャプテンEOはマイケルジャクソンが主演の3D映像アトラクションで、SF的な世界でマイケルが歌と踊りで悪いやつを改心させるみたいなストーリー(うろ覚え)だが、敵キャラの一人に爪がめっちゃトゲトゲのやつがいた。3Dで飛び出してくるもんだからそいつの爪を見るのが死ぬほどきつくて、結局終わりまで目をつぶっていて全く楽しめなかった。
関係ないが、その時一緒にディズニーランドに行った当時の恋人には帰り際「もうあんたとはディズニーに行かない」と言われ、その後実際に行くことはなかった。たぶんこれは先端恐怖症のせいではないと思う。

senntan

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